ネットビジネスの教科書として、MEDIA MAKERSを読んでみる

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田端信太郎 著 『MEDIA MAKERS-社会が動く「影響力」の正体』を読んだ(再読)。

2012年に発売されたこの書籍は、インターネットを中心とするメディア環境の変化を述べた書籍として、評価されている。著者は2017年現在、LINE株式会社上級執行役員の田端信太郎氏。
Twitterでも10万フォロワーを持っているような現代のインフルエンサーである。

私はこの書籍を、メディアの教科書というよりは、SNS時代のネット人格醸成のための教科書として読んだ。

目次の一部を抜粋する。

・「キャッシュ」から「タレント」と「アテンション」の時代へ
・「アテンション」を集め、「タレント」をモチベートするメディア
・コミュニケーションとクリエーションは似て非なるもの
・誰もがメディアになり得る「情報爆発時代」
・なぜ、「缶けり」専門誌は存在し得ないのか?
・上場廃止に向かうライブドア社内で見えたこと
・源氏物語からニコ動までコンテンツを分類する3次元マトリックス
・「食べログ」と「ミシュラン」の違いから考える参加性と権威性
・映画監督はなぜ「偉い」と思われるのか?
・「ペルソナ」があればコモディティ商売から脱却できる
・「FT」の紙がピンクなのはなぜか?
・編集権の独立−高潔さがメディアの差別化要因
・技術が進化しても記者の使命は変わらない…は間違い!
・馬具メーカーであることをやめたエルメス
・津田大介、ホリエモン、「お布施型」メディアが流行る理由
・雑誌がオーケストラなら、メルマガはロックバンド

昨今のネット界隈のビジネスに感度のある人であるなら、興味深い構成であることには頷いてもらえるかと思う。いくつか有用だと感じた概念があったので以下に紹介したいと思う。

 

メディアを8つに分類する3次元マトリックス

なかでも特に有用だと思ったのは、コンテンツを分類する3次元マトリックス。

①ストック⇔フロー
②参加性⇔権威性
③リニア⇔ノンリニア

この3軸で、コンテンツを分類するとあらゆるネットコンテンツの立ち位置が明確になる。

 

たとえば、

Wikipediaは、①ストック②参加性③ノンリニア
日経新聞は、①フロー②権威性③ノンリニア
ビジネス書は、①ストック②権威性③リニア

というふうに分類される。

これをネットビジネスにどう使うかという視点であるが、自らが弱い部分を意図的に補うための戦術を考えて行くのがいいだろう。

たとえば、twitterだけの人気アカウントは、①フロー②権威性③ノンリニアなので、逆に①ストック②参加性③リニアを意識したコンテンツを生成することで一気に他を出し抜くチャンスになる。

たとえば、フローのtwitterとストックのブログとは、相互補完関係があるメディアなので、戦略的にネットでキャラをブランディングしようとするなら、twitterとブログは連携させるべきだ。

オンラインサロンとnoteは参加性と権威性の部分が大きく異なっており、権威性を使ってオンラインサロンを立ち上げるとただの質問大会になって運営者は疲弊する。ゆえに、知識部分はnoteやメルマガで教授し、フォロワーたちとの交流にオンラインサロンを使うのがベストである。

このあたりの話はつねづね副業ラボのツイキャスなどでもやっているのだが、
結構理解していない人が多く、twitterでやたらめったらnoteのリンクを呟けば売れると思っている人が多い。

 

メディアをブランディングするために必要なのは編集権の独立

メディアというものが、経済的・法律的には送り手である企業の「所有物」であることは紛れもない事実です。しかし、そもそもメディアとは送り手と受け手をつなぐ「媒体・媒質」のことであり、受け手に影響を与えないメディアには存在意義はありません。それゆえ、送り手企業の経済的利益をはかることを第一の判断軸にして、メディア運営における編集判断がなされることは、必ずや、読者の離反を招き、結果的に送り手企業の所有物としての「企業価値」や「資産価値」も破壊してしまうことになるはずなのです。

(「編集権の独立−高潔さがメディアの差別化要因」)

ここでも解説されている通り、メディア(コンテンツ)の信頼度は、行ってしまえば「売らんかな」の精神からの独立性にある。自分の記事を売りたいから提灯記事を書いていると思われたらメディアは終わる。このへんは自戒でもあるわけだが、なるべく自メディアの儲けとは切り離された部分で有益な記事を買いてメディアとして信頼された上で課金モデルをまわしていくほうが、永続的な運営につながっていくはずである。

 

メディアのオリジナリティを追求するためにペルソナを意識する

読者の「ペルソナ」をわかりやすく外部に体現するアイコンとしての表紙専属モデルや、読者層を指す造語の対外的なアピールになります。たとえば、「LEON」という雑誌は、「ちょいワルオヤジ」という言葉で、彼らの読者ペルソナをうまくラベル貼りしてパッケージングし、そして、その「ちょいワルオヤジ」を体現する存在として、ジローラモさんを表紙モデルに用いました。「CanCan」は、ゆるふわ愛されOLというように読者のペルソナにラベル貼りし、それを「エビちゃん」というキャラで体現したわけです。(中略)この広告主に向けて語られる「読者ペルソナ」の設定が、広告主の脳内に呼び起こす「ああ、このメディアの読者は、ウチの製品のターゲットユーザーと近いな!」というシズル感が強ければ強いほど、広告メディアとして、単なる「クリックいくら? インプレッションいくら?」のコモディティ商売からの脱却も可能になりやすいと私は確信しています。

(「ペルソナがあればコモディティ商売から脱却できる」)

ここにも書かれているが、雑誌メディアを運営していた著者だけあって、ネットメディアが手薄になっている部分を的確に指摘している点はお見事である。とはいえ、軒並み衰退する紙メディアをどうするべきかというと別の話になるのだが。従来の雑誌は、読者のライフスタイル像みたいなものを事細かに仮定し、調査し、かなり突っ込んだ提案をしていた結果、カルチャーを生み出せていたのだと私は考えている。単なるネット調査ででてきたイメージに「当てに行く」記事ではなく、フォーカスインタビューや読者とのコミュニケーションを通じてあぶり出されてきた潜在ニーズを鮮やかにコンテンツとして表現してあげること、これができればネットメディアであっても、きっと新たなカルチャーを生み出すことができるはずだ。実際、インスタグラムがこれまでの雑誌メディアの役割を果たしはじめている。憧れられるような強烈なライフスタイルを発信しつづけるものはメディアでも個人でも、確実に時代をつくっていくのである。

 

書かれた当時の熱量を感じながら冷静に読むとメディアビジネスの未来が見えてくる

3年前に読んでみたときよりもMEDIA MAEKERSは学びが多かった。それは、自身でtwitterやブログ、noteやオンラインサロンなどのメディア運営をやってみて、各種経験を棚卸しすることができたからかもしれない。ぜひ、ちょっとだけでもメディアを持っているという方(twitterアカウントを持っていたり、ブログを書いているという方)は、ネットビジネスの視点でこの本を読んでみてほしいと思う。2012年当時からメディアの何が変化し、何が変わらないのかに焦点を当てながら読むことで、メディアにまつわる潮流の本質をつかむことができると考えます。

 

 

おしまい

 

 

文献リスト

・『MEDIA MAKERS-社会が動く「影響力」の正体

 

 

 

 

 

 

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