『革命のファンファーレ』は、「作り手」のための広告&マネタイズ論だ

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キングコング西野亮廣氏の『革命のファンファーレ』を読了。

えらく面白くて数時間で読めた。

副題は「現代のお金と広告」であるが、もう少し補足して言うと、「現代の『作り手』のための広告とマネタイズ論」かなと思う。
すなわち、表現やものづくりに関わる人や志す人はぜひ読むべき本である。

マネタイズの方法から、告知、プロモーションの考え方が実例および数字を交えて書かれてある。
こんなナマの情報が本人の企図とともに読める本はなかなかない。

この本に書かれていることで個人的に強く印象に残ったのは以下の3点だ。

①好感度と信用は違う
②本当の意味での広告
③ロボット化・AI時代で勝つビジネスとは?

それ以外にも、クラウドファンディングを使ったマネタイズの方法やエンタメビジネスのリアルな裏側などが書かれており、一読の価値はある。

ただ西野氏のオリジナリティという側面で上記の3点が突出していると感じた。

 

①好感度と信用は違う

「芸能界の収益の出どころは広告費である」と看破するところからその論ははじまる。

ベッキーとゲスの極み乙女。が例として分かりやすい。
不倫をしても活動を続けることができたゲスの極み乙女。に対して、ベッキーの活動が、たった一度の不倫で全て止まった理由は、彼女が「認知タレント」でファンを抱えていなかったからに他ならない。スポンサーが離れ、広告以外の場所でお金を稼ぐしかなくなったわけだが、ファン(ダイレクト課金者)がいないからお金を生み出すことができない。テレビタレントとしてリクエストに徹底的に応え続けた結果だ。現代のテレビ広告ビジネスの、最大の落とし穴だと思う。

『革命のファンファーレ』本文より

日本のテレビ局の収益の大半はスポンサーからの広告費である(+不動産w)。
広告とは、大衆に対してその商品のポジティブなイメージを印象づけることが目的である。
だからタレントは嫌われていないこと(=好感度)が何よりも重要。
逆に、嘘をつかないこと(=信用度)は広告とは相性が悪い。

いや、これはなかなかですよ。普通のタレントなら、自分の食い扶持はテレビ番組やイベントなどの出演のギャラだと考えるはずです。ベッキーだってそう信じていたはず。このあたりから西野さんは視点が違うんですね。彼は間違いなくメタゲームを戦っている。

八方美人で誰からも好かれるようにすれば、フォロワーが増えてマネタイズができると思っている人もいるが、それは短絡的だ。

どちらかと言えばフォロワー数は好感度・認知度に近い指標で、お金を払ってくれるようなファンを生み出すには何かしらの強い主張や高い能力・信頼性が必要になってくる。

著者が「嫌われ者」(=低好感度)であったからこそ、ここまでドライに理論化できたのではないだろうか。

 

②本当の意味での広告とは

この本でもっとも価値がある具体論はこの部分だ。
多くの人は信用とマネタイズの部分に感銘を受けると思うが、新しい時代の広告プロモーション事例をここまで具体的に解説した書籍は他にないという意味で、非常に価値があると思う。

目次からいくつか抜粋してみると…

・ネタバレを恐れるな。人は「確認作業」でしか動かない。
・「セカンドクリエイター」を味方につけろ。
・信用時代の宣伝は、口コミが最強。口コミをデザインしろ。
・自分の作品と、社会を一体化させろ。
・お客さんは、お金を持っていないわけではなく、お金を出す「キッカケ」がないだけだ。

西野氏の主張に共通しているのは、「たくさんの人を味方(共犯者)にしてムーブメントを起こしていくやり方が、この時代にもっとも有効な広告である」ということ。

マーケティングでも「エヴァンジェリスト」という用語がある。和訳すると「伝導者」。商品やサービスを広めてくれる熱心なファンといったところで、「信者」とも言える。アップルやBMWなんかは信者が多いブランドだ。

この本では、「信用」という尺度でこのエヴァンジェリストをどうやって作っていくかということが書かれている。

広告を作るときは、自分の手から離れても尚、こういった「広告の連鎖」が自然発生する基盤を作ることが大切だ。
今の時代、面白い看板があれば写真にとってインスタグラムにアップし、政治に意見したければツイッターで呟き、感動したことがあればフェイスブックに書き、日記はブログに書く。それを生業にしているか否かの違いはあれど、国民総クリエイター(情報発信者)だ。クリエイターに軸足は置かないまでも、時々趣味で作り手側に回ろうとするセカンドクリエイター(ラジオで言うハガキ職人)の層が増えに増えた。…これからの時代は、このセカンドクリエイターのクリエイター心をいかに揺さぶるか。いかに「つくってみたいな」と思わせるか。そこがヒットの鍵になってくる。

『革命のファンファーレ』本文より

「広告代理店にお金を払ってCMや公共スペースの枠を買い、商品のよさをただ述べるだけ」の旧来の広告は、西野氏の定義する「現代」にはまったく適合しなくなっているということかもしれない。

 

③ロボット化・AI時代で勝つビジネスとは?

こちらの視点は、この本のメインテーマではないが、彼の視点が面白かったので紹介したい。

間違いなく僕らは、60歳から、新たな仕事を探さなければならない。…その時にだ。若い人間にはない「老人のアドバンテージ」をキチンと提示できていあにと、人生の後半戦において仕事にありつけない。若い人間にはない、ロボットにもない、老人しか持ち合わせていない能力(老人力)を見つけ、それを仕事化していかなくてはならない。

『革命のファンファーレ』本文より

ここで西野氏は沖縄にある80歳近いお爺さん店主がやっている居酒屋の例をあげる。彼は店主のくせに客より先に酔いつぶれて寝てしまうが、「愛される欠陥」(=許され力)があるので他の客が店員を代替してくれてうまくいくのだと。

歳をとるというのはこの「愛される欠陥」(=許される能力)を高めていくこと他ならない。AIやロボットはもちろんこのような欠陥能力を代替することができない、と。

AI・ロボット時代における人間の定義は「ミスをすること」だという説があるが、まさにそこを使って存在価値を高めようという提案に思える。

例が極端すぎてピンとこない節もあるが、実際、業務遂行能力ではなくて、その人の存在だけで周りがうまく回る事例というのは古今東西たくさんあった。「長老」みたいなものだ。

指針としてみると、歳を重ねるほどにストイックではなくしなやかに生きていく必要がありそうだ。

 

まとめ

 

 

冒頭でも述べたが『革命のファンファーレ』は、何かしら「つくりたい」「表現したい」「発信したい」と考えている人にとっては読むべき本である。旧来の定石のもはや通じなくなっている部分を過激な表現でつっつき、新しい常識に置き換えてくれるだろう。

 

もちろん西野氏はゴールデンの番組で活躍していた芸人だ。すべてを真似することはできない。ただひとつでもアイデアを取り入れて自分なりにチャレンジしてみることで思わぬ反応が手に入ることはかなり高い確率で予想できる。

『試行回数でレバレッジをかけよ』でも述べた通り、現代はやったもん勝ちの社会になりつつある。頭のいい人たちがウンウンうなりながら机上のプランより、泥臭く実践を繰り返して得られた経験知のほうに価値がある。

もし自身のうちに秘めたアイデアや創造物があるのであれば、すぐにでも形にして発信してみたほうがいい。きっと誰かが反応してくれるはずだし、そこから新しい物語がはじまる。

 

 

おしまい

 

 

 

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