『評価経済社会』での生き方を島田紳助に学ぶ

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評価経済社会は始まっている

Youtuberにはじまり、VALUやTIMEBANKなど、個人の価値やネットワークをマネタイズするプラットフォームがここ数年で急速に出始めてきています。俯瞰すると、一般人すらタレントのように好感度・信頼性・人気が評価され、金銭価値化されていく世の中になっていくのかもしれません。

まさに岡田斗司夫氏の言う『評価経済社会』化が急速に進行していると言えます。

私個人はその流れに対して、賛成でも反対でもありません。この流れが加速すると、面白くなる人もいれば、面白くなくなる人もいるでしょう。これまで日の目を見ることのなかった個人がスポットライトを浴びるチャンスを獲得する一方で、慣れ親しんだコミュニティで平穏に暮らしたかった人が生きづらくなるのかもしれません。
ただ確実に言えるのは、この流れが不可逆であるということです。

インターネットが登場し、iPhoneが発売され、Facebook、Instagramがコミュニケーションのツールとなっていくなかで、テレビや雑誌に載る特別な芸能人と、一般人の垣根が取り払われ、すべてがフラットなプラットフォームの上で評価されていく。

このような「評価経済社会」においた、戦略を早くから解いているのが実は島田紳助です。

『紳竜の研究』というDVDがあります。友達の家に置いてあるのを見て、即買いしたのを覚えています。

このDVDの見どころは、NSCでの島田紳助による講義です。
テーマはいくつか存在し、

・「才能と努力」
・「漫才の教科書」
・「相方と戦略」
・「XとYの分析」
・「運と計算」
・「心で記憶する」
・「テレビの秘密」

などに分かれます。

すべて面白いのですが、改めて見直してみて、特に普遍性を感じたのは「才能と努力」「XとYの分析」「相方と戦略」でしょうか。

●「才能と努力」

島田紳助の主張は以下(太字)のようなものです。

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世の中はすべて才能である。
努力も才能も、数値化して0から5まであるとする。
才能5の人間が5の努力をすると5×5=25で最高点の結果が出る。
M-1に落ちてる受講生にも5の努力をしてないやつがいるかもしれない。やったつもりでも、間違って努力している可能性がある。才能が3〜4あっても、1の努力しかしてなければ、かけたって3、4にしかならない。
だから自分が伝えられるとしたら努力の方法だけ。
***

別の箇所で芸人の才能がゼロの後輩に鉄板焼屋を薦めたら大成功した事例が話されます。これも結局、後輩の彼が才能が「0」で努力する能力が「5」あったことを見抜いた島田紳助が別の道を薦めたことがきっかけになっていると説明されます。
これはGrid−やり抜く力−の「努力×努力×才能」の方程式とも類似しています。


そしてここからがさらに深い内容なのですが、紳助氏は努力の方法について説明していきます。

***
ミスター・タイガースの掛布雅之が虎風荘で毎日素振り500回していた。
彼と話すと「紳助さん違うんですよ。プロになったら誰でも500回くらい素振りしてますよ。それを努力と言えますかね?」という。
意味なく素振りしても腕太くなるだけだ。
たとえばボクサーは一日3時間以上練習したらオーバーワークになる。
「何も考えずに数をこなす」ということを努力と言ってはいけない。
漫才師も同じ。
何時間も練習しても面白くなるわけじゃなくて、それはただネタに慣れただけの状態。ネタは必要以上に練習しちゃ駄目。そんなことよりもやるべきことがある。
***

「量をこなす」「量が質に転化する」というのは間違ってはいませんが、そこには「正しく考えながらやっている度合い」が変数として存在していると個人的にも思います。
上達度をY、こなす量をX、考えてやっている度合いをαとすると、
Y=αXとなるはず。一日24時間という限られた時間があるなから、プロが結果を出す場合、否応無しにもαに注目してその質を上げざるを得ないということ。
ちなみにαの質の上げ方のヒントは「自らの行動を書き出す」ことにあると考えています。
上達したい対象に関する努力の内容と気づきを日々日記に書き出して振り返ることで、上達の速度は一気に高まるということです。

 

 

●XとYの分析

これが評価経済社会で重要になってくる方法論だと思います。

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(X)は自分の得意領域
(Y)は時代のニーズ
XとYが明確に定まってはじめて自分が何をやるべきかがきまる。

(X)の見つけ方は、売れている漫才師を見て「面白さが理解できる」「自分でもできそう」なものをいくつか探して、そこから構造を抽出してオリジナルを作り上げていく。
(Y)の見つけ方は、何十年も移り変わっていく漫才を全部見る、聞く。流行の移り変わりを研究する。

俺も今まで沢山いろんな仲間が居たりしたけど、このXもわからんと、Yもわからんと悩んでる人ばっかりやわ。ほんまに。先輩も後輩も。
***

新しい笑いをやりたいと相談されても「俺はお前やないからわからへん」と答えるというのも、この『XY理論』があるから。そして、たまたまうまくいった芸人がその後伸びない、一発屋が一発屋で終わる理屈もこの理論に基いて説明できます。
継続的に「売れる」をつくるための非常に有用な方法論だと言えます。

***
XとYがたまたま会うだけで売れた人間は一発屋。
Yがずれるともう売れない。なぜ売れたかを理解していない。
インパクトが強すぎて修正が聞かない。
売れ続けている人は、時代を見ながら修正している。
無駄な練習はする必要ない。
***

明石家さんまさんを例に出して「彼はYをしっかり研究しているから、時代に置いていかれない」という旨の発言をしています。たしかにさんまさんはポッとでの一発芸などもうまく取り込んだ上で自分の芸を展開するメタゲームを戦っているように見えますね。

芸能界だけではなく、ビジネス業界、出版業界、twitter界隈、サービスやアプリ、企業体に至るまでこの原則は当てはまるのではないでしょうか。一瞬跳ねるのは運でもできる。むしろ継続的に売れ続けることがプロである。そのように感じます。

 

●相方と戦略

売れるためのコンビの組み方についての解説ですが、起業やビジネスに応用可能に思えます。

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仲いいやつと組んでもしょうがない。
「どうやったら売れるか」を1人で考えて、それに会う相方をつくる。
やろうとしていることをひたすら実現するために根性のあるやつが必要だった。
漫才の教科書を3人めの相方竜介に授業した。
稽古をせずに漫才理論をずっと教えていた。衣装の話など…
***

漫才コンビ・紳助竜介におけるCEOは島田紳助だったわけです。
私も一時期お笑いにハマっていろんなコンビを研究したりしたのですが、決まってブレーンはどちらかひとりでしたね。「ブレーンの暗い性格の人間」と「底抜けに明るい/ただおもろい人間」の組み合わせがお笑いコンビには多い気がします。市場で勝とうと思った時、「冷静な戦略家」と、「情熱的でタフなソルジャー」の両方の要素が必要になるということなのかもしれません。

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20歳〜35歳の男がターゲットだと決めていたから、ジジイとババア相手の漫才は本気を出さなかった。
我々は一部に強力な支持を得られることが重要。
劇場に来ている前列の若い女を笑わしにかかったら負け。いちばん後ろで腕組んで見ている同年代の男が笑わなくなる。そして、舞台の向こう(=テレビの前)に本当の客はいる。
自分たちはそいつらを笑わせないといけない。
***

別のテレビ番組で「子どもに受けるやつは一発屋、同年代に受けるとターゲットともに成長するので売れ続ける」と語っていましたが、その方法論を論理的に説明しています。今回見直してみていちばん勉強になったのはこの部分でした。
女性や子どもに人気が出ると爆発的なブームになるものの、恐ろしい速度で陳腐化する現象を、私は生まれてこの方見続けてきました。
彼ら彼女たちの多くは本質を見抜いてコンテンツを選んでいるのではなく、自分たちのコミュニケーションのネタとして消費しているだけなわけです。だからコミュニティで飽きられた瞬間、手のひらを返したようにポイ捨てするわけですね。
そしてそれを避けるためには本質を見抜いてくれる層(お笑いならば同年代の男性)に絞るべきなのです。
この考えでいくと子どもに人気のYouTuberなんかは結構リスキーな選択なんじゃないだろうかと思えてきます。

 

DVD『紳竜の研究』は現代のコンテンツビジネスの成功法則が詰まっており、かつ、とても刺激的でわかりやすいです。下手な自己啓発本の10倍以上役に立ちます。ひとりで悶々と悩んでいたり、進路に迷ったりしている人はとりあえず見てほしいと思います。

 

●参考文献

『自己プロデュース力』−島田紳助

『評価経済社会』−岡田斗司夫

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