サヨナラ、昭和の幸せモデル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る
 


ワーク・シフト』の著者リンダ・グラットンと、経済学の権威アンドリュー・スコットによる「100年時代の人生戦略」がテーマの書。この本の要点は以下の2つだ。


100年時代の人生戦略のポイント

1)高齢における病気の克服により実質的な長寿化(健康寿命の延長)が進行すると、老後の資金の必要性から「教育期→仕事期→引退期」モデルは崩れていく。求められるのは、ステージを移行しながら自分の人生を主体的に生きていくスキルである。

2)人生が長期化すると様々なリスクや機会に備えるため、金銭的な有形の資産と、家族や友人関係、知識、健康といった「見えない資産」とのバランスをとることがますます重要となる。この「見えない資産」は生産性資産、活力資産、変身資産の3つに大別される。特に見えない資産は市場では売買できない(80歳のときに一生の友人を「購入」することはできない)ため、すべてのステージを通じてコツコツ投資を続け、自らを再創造することが重要になってくる。


ポイントは、アップデートし続けられるか

日本も含めて高齢者介護・医療や年金問題ばかりが議論されているが、そもそもなぜこのような事態に陥っているかというと人が80年以上健康に生き続けるというモデルを国家の仕組みや制度に組み込んでいなかったことが大きい。まずすべきなのは「老い」自体の概念を変えること。そして人生全体を設計し直すことなのだ。ライフシフトはそのための教科書兼提案書といったポジションを持つ書籍である。

「教育→仕事→引退」という3ステージの人生が一般的だった時代は終わり、70代以降も働かなければならない時代はもう目の前に迫っている。だったら定年を80歳まで延長すればいいというのは、企業寿命が30年と言われる時代に非現実的だ。むしろ早くから複数のキャリアを準備して、ライフステージに応じて移行させていく「マルチステージ」の人生に今後は突入していく。

そのとき必要となるのは、画一的な生き方にとらわれず、生涯「変身」を続ける覚悟だ。キャリアの選択肢だけでなく、パートナーシップのあり方、友人関係、居住地に関しても新しい考え方を持たねばらない。

『ライフシフト』で述べられているのは、今後絶対寿命が伸びるのでお金・人関係を含めた老後の人生を若いときからデザインし、つねにアップデートしていきましょうという話である。

*****

長寿化がもたらす恩恵は、煎じ詰めれば「時間」という贈り物だ。人生が長くなれば、目的意識をもって有意義な人生を形作るチャンスが生まれる。バイオリニストのスティーブン・ナハマノヴィッチは、創造性についての著書でこう述べている。

時間がたっぷりあると思えば、立派な大聖堂を建てられるが、四半期単位でものを考えれば醜悪なショッピングモールが出来上がる。(中略)長寿化は、人がショッピングモールではなく大聖堂を建てることを可能にするのだ。

−本書・第6章より

*****

 

私が重要と感じたのは人生に必要な新たな3つのステージという概念だ。


人生の新しい3つのステージ

長寿化と資産の重要性を鑑みた時、人生において、次の3つのステージが新たに登場する。

 

エクスプローラー

一ヵ所に腰を落ち着けることなく、身軽に探検と旅を続け、幅広い針路を検討する「エクスプローラー(探検者)」の時期。この時期では、多様な人たちの苦悩や喜びを自分事のように考える「るつぼの経験」が組み込まれていることが望ましい。他の人生の物語にふれることで、自分の価値観が揺さぶられ、アイデンティティについて熟考できるからだ。

 

インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)

組織に属さずに、自由と柔軟性を重視して小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」の時期。このステージの人たちは、事業活動自体を目的としており、試行錯誤しながら未来を探索する「プロトタイピング」を通じて、学習を深めていく。このステージでは、安心して失敗できるからだ。現在の18~30歳の層にとっては一つの選択肢になりつつある。彼らは都市部にある創造性の集積地に集まって、みんなで協働する精神を重視している。

 

ポートフォリオ・ワーカー

異なる種類の仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」の時期。他の新しいステージと同様、年齢を問わず実践できるが、この生き方をとりわけ魅力に感じるのは、すでにスキルや人的ネットワークの土台を築いている人たちだ。このステージにうまく移行するには、フルタイムの職に就いているうちに、小規模なプロジェクトで実験を始め、汎用的スキルや社外の多様なネットワークといった変身資産を育むことが望ましい。
個人的に感じたのは日本においてこの3つのステージはマイノリティであるということ。学生からそのまま企業へと就職し、自らビジネスを起こす経験なくそのまま老年を迎える。転職のない一本道のキャリアの場合はポートフォリオ・ワークを行うスキルもネットワークも育っていない。

 

私は昨年からはじめて本格的に副業を始めた。現時点で収入口はブログの執筆、noteの販売、サロンの運営、不動産の運営、事業会社へのコンサルティング、アフィリエイト、投資など多岐に及ぶ。(いずれも微々たるものだが)

やってみて思うのはどれも最初はまったく稼げないということだ。しかしあるとき急にノウハウを理解したり、人脈を介して紹介してもらったりすることでそのポートフォリオの一口が華を開いたりする。だから副業もとい複業についてとるべきスタンスは長期保有なのである。現在の日本人のマジョリティの生き方として「長期で複業を持つ」というスタンスはほとんどモデルとして存在しない。


「昭和の幸せモデル」からいかに早く脱却できるか

「ライフシフト」が行う提案の真反対を行くのが実は日本の戦後・昭和時代の幸せな生き方モデルだ。
男はいい大学にいって大企業に就職し、途中で専業主婦の奥さんをもらって35年ローンを組んで家を買う。定年60歳まで勤め上げ、その後は引退、年金暮らし。今どき、鼻で笑ってしまうような超ハイリスクな生き方である。
「大企業でリストラされたらどうするの?」「そもそも倒産するんじゃない?」「奥さんと仲悪くなったら?」「不動産って今後下落トレンドですよ?」「年金もらえないかもしれませんよ」四方八方からいじわるな質問が飛んできそうである。

個別で見ると馬鹿らしいが、でもそれらをまとめあげた「昭和の幸せモデル」にこだわっている人はまだまだ多い。このようなハイリスクモデルが支配的な理由は、ひとえに団塊世代の人口ボリュームが原因だろう。彼らの価値観がそのままマスメディアから拡大伝達され、クルマ・不動産・家電、その他サービスに、マーケティングというお題目を通じてビルトインされる。

私の周りでもキャリアの早い段階で転職を経験し自らの市場価値を認識している人は、昭和の幸せモデルを脱却している人が多い。たとえば結婚しても親の実家に住んでいたり、クルマはカーシェアリングやレンタルで済ませていたり、あるいはライフワークとして副業を会社に認めてもらっていたりする。ただこれらの生き方は全体で見ればまだまだ少数派で一つの会社にしがみついて出世していくことが正しいという価値観は依然強く残っている。

私自身は別にその生き方を否定するわけではない。実際にそのルートに乗って非常に華々しく活躍している友人も数多くいる。ただし、くれぐれもマジョリティの生き方を選んで安心しないこと。20世紀は多数派が地位と権力を得る時代だったが、21世紀は少数派がそれらを奪還する時代なのだから。

 

 

 

おしまい

 

関連note

50年働く時代のキャリアの考え方
−60歳で定年する時代が終焉し、働き続けなければならない時代に、どのようなキャリア形成をすればいいのかを考察しています。

マイナンバーで副業が会社にバレるのか?
−サラリーマンは副業すると確定申告をしなければいけません。そのときに副業が会社にバレないための方法論を検証しました。

正しい副業の始め方を副業コンサルの悠斗さんに聞いてみた
−アフィリエイト歴10年の悠斗さんに副業を始める際のコツと注意点と聞いてきました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。