変化の時代が苦手な人に読んでほしい、最新のキャリア論

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『仕事人生のリセットボタン』為末大・中原淳

毎年、毎年、就活生の相談に乗ることも多く、偉そうにしている私であるが、
どうも最近、就活生に対しても、自分に対しても、キャリアの考え方をきちんとアップデートしていかないなといけないと思っていた。

個人的には金井壽宏氏や、高橋俊介氏の著書がお気に入りで、
考え方としては、ガチガチに決めていく「キャリアデザイン」ではなく、
大きな方向性だけ決めてあとはタイミングごとに考える「キャリアドリフト」でやっていこうという方向性だ。

(参考)
「キャリア・ドリフト」・・・自分のキャリアについて大きな方向づけさえできていれば、人生の節目ごとに次のステップをしっかりとデザインするだけでいい、節目と節目の間は偶然の出会いや予期せぬ出来事をチャンスとして柔軟に受け止めるために、あえて状況に“流されるまま”でいることも必要だという考え方。

でも、こういうキャリアドラフトという考え方を持ったとしても、現在の変化は早すぎかつ複雑過ぎて、
チャンスだと思ったタイミングで飛び移れない人がたくさんでているんじゃないか、と最近は思ったりもしていた。

そんなとき出会ったのが、為末大氏・中原淳氏の『仕事人生のリセットボタン』という本。

タイトルだけを見ると、「退職本」みたいに見えるので、きっと若い人は手に取らないような気がする(笑)。
たしかツイッターか何かに書評が流れてきて、興味深く思ってポチったのだ。

為末大選手はもともと陸上の100m走の選手。中学校のときに全国一位だったが、高校生の時に伸び悩みを感じ、400mハードルへと転向する。その後、22歳でシドニーオリンピックに出場、23歳・27歳世界陸上で銅メダル、その後オリンピックでメダルをとることはなかったが、コーチや解説者では生き延びれないと判断し、現在は経営者に転向。

この本は、為末氏の各時代の葛藤を仔細に描き、その時の判断・キャリア戦略などが、為末氏の生々しい主観的な視点と、人材開発の研究者である中原淳氏の客観的な視点で解説されている。

 

個人的に印象的だった箇所をピックアップしてみる。

 

●負ける主流か、勝てる傍流か

なぜ為末氏が花形の100mを捨て、ハードルに転向したかという箇所。
ここには明確な狙いと戦略が存在した。もちろん当時高校生だからすべて言語化されていたのかは分からないが、直感も含めて転向を判断したことが現在の為末氏の言葉で語られている。

中原:
この(高校二年の100m選手時代に肉離れで怪我をした)あと、為末さんは、高校時代、「陸上のチャンピオン」である100メートル競争から、大きく方向転換し、ハードルに転向いたします。そのプロセスの中では、どんなに頑張っても結果が出ない、という長い「踊り場」がありました。

(中略)

為末:
当たり前の話ですが、「勝てるものを選ぶこと」は勝つための最良の方法です。特にスポーツ選手は「最後まであきらめない者が勝つ」と思われている人が多いと思いますが、実際はどの選手もライバルを意識しながら自分の立ち位置を考えていくんですね。そしてどの選手も”天才”と呼ばれる人に必ず一度は出会います。本当の天才は”最後まであきらめずに”そのまま勝利へと突き進むのですが、そういう例は稀です。…僕は、以前は自分のことを天才だと思い込んでいたのですが、本当の天才に出会った時に「あ、僕は天才じゃないんだ」というのをはじめて理解して、そして導いた答えが「天才と真っ向勝負しない」「天才が天才であることがうまく活かされないステージを選ぶ」ということでした。

このような形の「挫折」は誰にでもあって、30人のクラスで1番でも学年では埋もれるし、学年でトップでも学校の外に出たらもっとすごいやつはたくさんいる。みんな小学校から無意識に自分の順位を肌感で感じとっていて、何なら自分は比較的いいポジションに入れるんだろうと考えていたりする。勉強なのか。スポーツなのか。はたまたお笑いなのか。ケンカなのか。

為末氏が面白いのは「天才と真っ向勝負しないステージ」としてハードル競技を選んだ、ということだ。
「競合の強くなさ」を算定した上で自分のポジショニング戦略を考える。これは一般人の我々にも使える考え方だ。
たとえばバイリンガルの人が、外資ではなくあえて超ドメスティック企業に入って、海外担当役員に抜擢されるみたいな戦略だろうか。

 

 

●3年ごとに大きな転換を求める/7割くらいのときに「もう終わり」だと感じろ

「コンテンツの賞味期限」「オワコン」という言葉は一般化しているが、それに対して、中の人はどのように向き合う必要があるのかが、語られている。すなわち、「オワコン人材にならないためのヒント」である。

為末:
3、4年ごとに大きな転換をしたがっている気がします。何かを「いじり」たがっていますね。2001年の世界陸上エドモントン大会で銅メダルを獲ってから、会社に一年半ぐらいいたけど、そのうち「うーん」と思ってフリーになった。短距離からハードルに移行した時も、そうだったかもしれません。

(中略)

中原:
僕はキャリア選択において、ひとつ持論があります。たぶん、人生には、いくつかの上り坂やピークが何回もあるんだと思うんです。僕の持論は、「ピークの下りはじめになってから、次は何をしようかって考えるのは遅すぎる」、というものです。…人生において、次に何をするかは、ピークの上り坂の七合目くらいで考え始めてちょうどいいと思っています。でも、多くの人は、次に何をやるかを考えるのが遅いんです。

終わる前に新しいことを始めておくこと。
たいてい、ロケットスタートしてるように見える人は、他人がまだ気づいていない時期から準備を始めてたというパターンがたしかに多い。「これが終わったら、次は何だ?」という視点は常に持っておきたい
ただ、それをするためにはある程度の余裕が必要で、現業を6〜7割に抑えながら、未来の「兆し」探しみたいなことを残りのパワーでやっておくほうがいいのだと思う。
こうすることで、過去と未来が意外な形で接続され、あなたのキャリアがオリジナルなものになっていく。

●人生をピボットターンで進めていく

上で述べたオワコンを回避するために、中原氏は人生をピボットターンで進めていくというアイデアを提唱している。
軸足を持ちながら、もう一方の足で新たな領域にチャレンジするイメージだ。

中原:
僕は学生にこんなことを言うことがあります。新たなことをするときには、「ピボットターン」のイメージでやったほうが成功に近づく。ピボットターンとは、バスケットで出てくる動きですよね。いったん軸足を決めてストップしたら、もう片方の足で方向を決めて動く、というルールです。…「今の自分」や「これまでの自分」を軸足とするならば、新たなことをやりたいときには、この軸足をまずは地にどっしりと落ち着けなくてはならない。つまり、この軸足を活かすことを考える。…「これまで」と「これから」のバランスをとりながら、新たな物事にチャレンジしていったほうがいいと思うんですよね。
たとえば『ライフシフト』の中で、リンダ・グラットンは、2007年生まれの日本の子どもの50%は107歳まで生きると予想しています。そして、100年生きる世界では、80歳まで働くことが常態化すると言います。そういうことになると、一つの場所だけで「右肩上がりの単線エスカレーター」はさすがに無理ですよ。ときに起業したり、複数の起業で働いたりすることになるんじゃないでしょうか。

イメージしやすいのは、
自動車業界の経験を活かして、ITの業界に行き自動車とIOTの開発を担当する。その後、IOT開発の経験を持って、家電の領域へ行き…みたいなキャリアだろうか。

これに限らず、いろんなところで「掛け算」「組み合わせ」と言われているのは、もはや単一のテーマだけでは3ー5年しか個人のキャリアも、企業の儲けも持たないので、複数の要素を同時並行で鍛えて置くのが理想だということだ。

●より複雑な社会に変化するときに、具体的な入門書

この本がとてもいいと思うのは、為末氏という陸上選手のキャリアを通して、今後の一般人のキャリア論にまで昇華しているところだ。スポーツ選手のキャリアは、結果第一主義であり、同時に不運な怪我によって一生のプランがそこでストップしたりする。それから慌てて次のキャリアを考えても鳴かず飛ばずだったりする。

そんな波乱万丈かつリスクの高いキャリアを歩んできたアスリートの具体例を、研究者の視点でわかりやすく紐解き、一般の会社員にも応用可能にブレイクダウンしている
特に、産業ごと突然死しかねないこれからの時代に、アスリートによって培われたキャリア論は、非常に示唆に富むものだと思われる。

私自身は、この本を読んで、なおさらに「みんなが目指すところへ行ってはいけないな」と感じたし、
「副業・兼業・趣味・人間関係」をそれぞれ独立させつつ、維持させていく重要性を実感した。

30歳前後〜40歳前後のキャリアについてモヤモヤ考えている人におすすめの一冊です。

 

written by PuANDA

 

 

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